【宅建士監修】新築に太陽光発電は失敗?やめたほうがいい?7つの注意点を解説

本記事に広告プロモーションを含みます

2009年に太陽光発電ブームが起こり、多くの新築物件で太陽光発電システムが導入されました。ところが、電気の売電価格が年々下がっており、かつてのように太陽光発電を導入して副収入を得るというのは難しくなったこともありブームは終焉を迎えました。

その一方で電気代はどんどん上がっており、太陽光発電が再び注目されています。ただ、すべての人におすすめというわけではなく、人によってはやめておいたほうがいいケースも少なくありません。そこでここでは、なぜ導入をやめておいたほうがいいのか、詳しく解説していきます。

新築に太陽光発電を設置する7つの注意点

これから家を建てるにあたって、太陽光発電システムを導入するかどうかで迷っている人も多いかと思います。そこで、ここではまず新築に太陽光発電を設置するか考え直したほうがいい理由について、わかりやすく解説していきます。

考え直したほうがいい理由は下記の7つになります。

  • 導入コストを回収できない可能性が高い
  • 施工ミスなどのトラブルが起きている
  • 太陽光発電に向いていない土地がある
  • 定期メンテナンスによる出費が発生する
  • 太陽光パネルに破損リスクがある
  • 近隣トラブルになることがある
  • 将来も確実に日当たりがいいとは限らない

それぞれの理由について、内容を詳しく見ていきましょう。

理由1 導入コストを回収できない可能性が高い

経済産業省の過去買取価格を参考に作成

太陽光発電ブームが起きた2009年には売電価格が48円/kwだったものが、経済産業省の公式サイトを見ると2023年には16円/kwにまで下がっており、これはさらに安くなると予想されます。このため、太陽光発電で副収入を得るどころか、導入コストの回収もできなくなる可能性があります。

住宅用太陽光発電10kW未満
2022年17円
2023年16円
2024年16円
引用:経済産業省

もっとも2009年から2023年の間に技術は大きく進歩しており、太陽光発電システムの価格も大幅に下がっているのもあり、正しく運用すれば導入コストの回収はもちろん、副収入を得ることも可能となっています。

この「正しく運用すれば」というのがポイントで、相場よりも高額なシステムを導入したり、何も考えずに売却先を決めてしまったりして、損をしている人も少なくありません。導入コストをしっかり回収できるように、事前にきちんと検討しておく必要があります。

理由2 施工ミスなどのトラブルが起きている

太陽光発電を取り扱っている業者がいくつもありますが、すべての業者が優良というわけではありません。技術力や経験値のない業者に依頼すると、屋根に穴を開けて金具を固定するときに、施工ミスをして雨漏りを起こしてしまうことがあります。

また、固定強度が弱い場合には台風でパネルが飛んでしまう可能性もあり、大雨によって電気系統のトラブルが発生することもあります。このとき業者によっては修理に応じてくれないというケースも起きており、本来なら必要のないリスクを負うことになります。

ただし、新築で設置する場合には、信頼できる業者に施工してもらえますし、補償もしっかりとしています。もちろん施工業者の技術力によっては不安要素として残りますが、大手ハウスメーカーを利用すれば、施工ミスのリスクを大幅に下げられます。

坪単価
三井ホーム60~100万円
へーベルハウス70~100万円
トヨタホーム70~110万円
ミサワホーム60~90万円
セキスイハイム60~90万円
住友林業70~100万円
積水ハウス60~70万円
ダイワハウス65~95万円
パナホーム60~100万円

また、大手以外の業者にお願いする場合は経済産業省のサイトで業者を確認出来ますので参考にして頂ければと思います。

理由3 太陽光発電に向いていない土地がある

太陽光発電システムを導入してもいいのは、安定した発電が期待できるケースのみとなり、下記の条件に該当する場合には、本当に導入するかどうか考え直してください。

  • 屋根が小さい
  • 屋根が南を向いていない
  • 屋根に十分な勾配がない
  • 日照時間が短い

太陽光パネルを設置するためには、屋根が十分に広くないといけません。さらに新築のデザインにこだわった結果、屋根が南を向いていなかったり、適切な勾配が付けられなかったりすると、発電効率が下がってしまい、期待するだけの発電量を確保できません。

また日照時間も重要です。東北や北陸などの日照時間が短い地域では日照時間が短いうえに、太陽光パネルに雪が積もってしまうため、冬場の発電量が大幅に下がってしまいます。また、日照時間が長い地域であっても、南側にビルなどが建っていると実質的な日照時間が短くなり、太陽光発電には適しません。

理由4 定期メンテナンスによる出費が発生する

太陽光発電は発電効率を維持するために、定期的なメンテナンスが必要になります。定期的なメンテナンスを怠ったことで老朽化に気づかず、災害時に大きな被害にあう可能性もあるため、定期メンテナンスは必須になりますが、もちろん費用が発生します。

備考費用
定期点検4年に1回5万〜10万円
清掃1年に1回3万〜6万円
パワーコンディショナーの交換10〜15年に1回20万〜30万円
足場代壁一面約8万円

さらに、メーカーの保証期間が過ぎてから故障した場合には修理費用がかかり、売電による利益が目減りします。これらの費用を減らすために、自分で清掃した結果、屋根で足を滑らせてケガをしてしまうといったリスクもあります。

理由5 太陽光パネルに破損リスクがある

X

太陽光パネルの寿命は25〜30年とされていますが、すべての太陽光パネルがそれだけ長持ちするわけではありません。日当たりのいい場所に設置されているため、台風による飛来物がパネルを直撃して壊れることもあれば、カラスの投石により壊れることもあります。

もちろんシステムがトラブルを起こす可能性もあり、安物のパネルを購入すると寒暖差の繰り返しでパネルにクラックが入ってしまうこともあります。メーカーの保証期間内であれば問題ありませんが、そうでない場合には高額な修理費用が発生します。

ただし、新築の場合には太陽光パネルは建物の一部となっており、火災保険で直せるケースもあります。

理由6 近隣トラブルになることがある

X

太陽光パネルを設置したことで、近隣から「反射が眩しい」というクレームを受けるケースがあります。さらにパワーコンディショナーの動作音が騒音トラブルになったり、「太陽光パネルのせいで体調を崩した」といったクレームを受けたりすることもあります。

少し理不尽に感じるような近隣トラブルもありますが、せっかく新築を建てたというのに、ご近所さんとの関係が悪化するのは好ましくありません。すでに太陽光パネルを設置している家が近所にある場合には、トラブルになっていないか確認しておくことをおすすめします。

理由7 将来も確実に日当たりがいいとは限らない

x

日照時間が短い場所は太陽光発電に向いていないとお伝えしましたが、家を建てたときには日照時間を確保できていたのに、近くにマンションや3階建ての家が建ってしまい、太陽光パネルが長時間ずっと日陰になってしまうことがあります。

残念ながら現時点では、太陽光発電を導入した人を守る仕組みがないため、十分な発電ができなくなっても補償を受けられません(交渉により補償されるケースもあります)。このようなリスクはどの家にもあり、太陽光発電を導入するうえで大きな不安要素となっています。

太陽光発電を設置した方が良いケース

太陽光発電を導入することには、ある程度のリスクが伴うことを理解してもらえたかと思いますが、それでもあえて太陽光発電を導入したほうがいいケースもあります。どのようなケースで導入したほうがいいのか、詳しく解説していきます。

電気代の高騰に備えたい

世界的なインフレと円安により電気代が高騰しており、今後さらに電気代が上がる可能性もあります。その結果、電気代が家計を圧迫している家庭も少なくありません。そのようなこともあり、最近は電気代の高騰に備えるために、自家消費型太陽光発電を導入する人が増えています。

さらに、国も自家消費型太陽光発電に対して高額な補助金を用意したり、税制の優遇をしたりしており、かなりお得に太陽光発電システムを導入できます。蓄電池が必要になるため、ある程度の初期投資は必要になりますが、さらに電気代が上がると考えれば、すぐに元を取れます。

このように、高騰する電気代対策として太陽光発電を検討しているというのであれば、多少のリスクをとってでも導入することをおすすめします。

大地震が発生する可能性の高い地域で暮らしている

国土交通省によると、30年以内に首都直下地震が発生する確率は70%もあり、これから首都圏で家を建てる場合には、ほとんどのケースで住宅が寿命を迎える前に、高確率で大地震による被害を受けることになります。

仮に住宅そのものに被害がなくても、地震発生直後に停電する可能性が高く、避難所生活を余儀なくされるのですが、自家消費型太陽光発電を導入しておけば、電力会社からの送電がなくても、いつもどおりの生活を送れます。

大地震が起きたとして、必ずしも停電するとは限りませんし、そもそも大地震が発生しない可能性もあります。ただ、太陽光発電があればいざというときに不便な思いをしなくても済みます。このため、大地震が発生する可能性が高く、それに備えたいケースも、太陽光発電の導入をおすすめします。

設置義務が決まった地域で新築の家を建てる

東京都では2025年4月以降に新築の家を建てる場合、太陽光発電を設置することが義務付けられています。このため、その条件に該当する場合には「導入したほうがいい」ではなく、「導入しなくてはいけない」ことになります。

ただし、設置義務があるのは大手ハウスメーカーのみに限られており、さらに屋根が小さい場合などは対象外となるケースもあります。それでも、新築に太陽光発電を導入するというのはいずれ全国的な流れになる可能性があります。

そうなると、太陽光発電を設置していない住宅のほうが少なくなり、いずれ肩身が狭い思いをする可能性もあります。東京都のように、すでに設置義務が決まった地域に家を建てるのであれば、義務化がスタートする前の段階でも、補助金をもらえるなら導入しておいたほうがいいかもしれません。

新築で太陽光発電を設置するときの注意点

ここまでの説明で、多くの人が太陽光発電を導入するかどうか方向性が決まったのではないでしょうか。そこで、ここでは実際に導入すると決めた場合に、注意すべきポイントについて解説していきます。

  • 最新の情報を集めて検討する
  • 南側の屋根に十分なスペースを確保する
  • 購入費用を住宅ローンに組み込む

新築で太陽光発電を設置するときに、注意しなくてはいけないのはこの3点です。それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。

最新の情報を集めて検討する

太陽光発電はいまでも進化しており、それに伴い太陽光発電に関する常識も変化し続けています。ところがインターネット上には、10年以上も前の情報が残っており、情報収集をしていると、そのような情報に惑わされてしまうことがよくあります。

インターネットで情報収集する場合には、その情報がいつ発信されたものなのかをチェックして、あまりにも古い情報だった場合には参考にしないように注意してください。また情報の発信元も重要で、信頼できるサイトで掲載されている情報をもとに検討するように心掛けてください。

屋根の南側に十分なスペースを確保する

すでにお伝えしましたように、太陽光発電は太陽光パネルを設置する場所が重要になるのですが、何も考えずに間取りを決めてしまうと、屋根の南側に十分なスペースを確保できず、発電効率が下がってしまうこともあります。

太陽光発電を導入する場合に、最優先すべきは屋根の南側に十分なスペースを確保することです。結果的に間取りが犠牲になることもありますが、設置してから後悔しないためにも、太陽光発電を最優先して間取りを決めてください。

導入費用を住宅ローンに組み込む

新築で太陽光発電を導入するときには、建物に付随する設備として住宅ローンに組み込みましょう。そうすることで太陽光発電を住宅ローン控除の対象にでき、しかも低金利で導入費用を借りることができます。

お金がないからといって太陽光発電をあとから導入するとなると、金利が高いソーラーローンを利用することになり、利息が大きくなります。しかもソーラーローンは返済期間が短く設定されているといったデメリットもあります。

太陽光発電は住宅ローンに組み込んだほうが圧倒的にお得ですので、特別な理由がない限り家を建てるときに設置してもらい、導入費用を住宅ローンに組み込みましょう。

まとめ

太陽光発電の売電価格は、以前とは比べ物にならないくらい安くなっており、しかもこれからさらに下がるとされています。太陽光発電システムそのものも価格が安くなってはいるものの、パネルの破損リスクなどもあるため、売電目的であるなら、新築で太陽光発電を導入するのはやめたほうがいいかもしれません。

ただし、高騰する電気代に備えるというのであれば、太陽光発電はとても有効な選択肢になります。大地震など自然災害に対する備えにもなるため、地震などで停電が発生するリスクの高い地域に新築を建てるのであれば、積極的に導入したいところです。

近隣に高層マンションなどが建ち、発電効率が大幅に落ちる可能性があるため、安易にはおすすめできませんが、いざというときに頼りになる設備です。まずはリスクをきちんと把握したうえで、それでも導入するメリットのほうが大きいと感じるなら、新築に付随する設備として、住宅ローンに組み込んで導入しましょう。